SaaSビジネスの成功のためには欠かせないカスタマーサクセスですが、特に日本においてはまだ新しい概念です。営業活動のような、従来行っている取り組みとは異なる姿勢が求められるため、その重要性については理解していても、活動を軌道に乗せることの困難さに直面している企業も少なくありません。
そこでこの記事では、100社以上の企業との実際の対話を通じて見えてきた、カスタマーサクセスの具体的な課題と、その解決ポイントについて取り上げます。
目次
1.カスタマーサクセスのフェーズと課題が発生しやすいフェーズ
通常、カスタマーサクセスでは顧客のライフサイクルに応じて活動のプロセスを設定します。まずは、一般的なフェーズについて解説します。
オンボーディング
一般的にカスタマーサクセスを担当するチームは、フィールドセールスの契約獲得後、オンボーディングから業務を担当することが多いでしょう。オンボーディングでは、顧客に対して社内でのサービス導入と利用定着を促すための支援を行います。顧客がサービスを自発的に使いこなせるようになるための手伝いといった位置付けと考えていいでしょう。このフェーズでは、顧客の早期の利用定着とそれによる継続利用率の向上を目的とし、顧客と共に、自社サービスを利用して目指すゴールと課題を整理します。オンボーディングの具体的なプロセスはこちらの記事でも詳しく解説しています。
オンボーディングは、キックオフから導入トレーニング、クロージングまで基本のプロセスが決まっているケースが多く、比較的仕組み化を行いやすい面があります。そのため、顧客の要望を正確に掴みさえすれば、きちんと完了させやすいフェーズです。
アダプション
導入後に本格的にサービスを運用・活用し、定着を行っていくフェーズです。アダプションについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
エクスパンション
顧客の自社サービスの活用を拡大するフェーズです。契約の更新や顧客の利用単価を上げるためのアップセルやクロスセルがここに含まれます。サブスクリプション型のサービスでは基本的に初期費用を抑えるように設計しているため、積極的にエクスパンションを狙って売上や利益を継続的に維持・拡大していきたいものです。
ただし、エクスパンションは、やみくもに行えばよいものではありません。押し売りは逆に顧客からの信頼と印象を下げることになりかねないため、適切な顧客に対して、適切なタイミングで適切な提案を行うべきです。
プロダクトフィードバック
継続利用にも繋がる顧客の満足度を向上させるためには、サービスの継続的な改善が求められます。また、さらなるサービス活用の提案やアップセルのチャンスを掴むためにも新機能の追加が必要です。顧客満足度の向上や売上の改善に繋がる項目を見極め、対応していかなければなりません。
アダプション以降のフェーズを当社ではサクセス期と呼んでいますが、サクセス期では、顧客ごとにそれぞれの利用状況と課題を確認し、解決のためのサポートが必要になってきます。個別対応が求められるため、対応を仕組み化することが難しい、もしくは難しいと考えてしまう傾向があり、その結果、業務負荷も高くなります。このような業務負荷や対応不足などの点から、サクセス期においては課題が発生しやすいと言えます。
2.【チーム規模:2~3名】カスタマーサクセスの課題とツールによる解決方法
ここからは、カスタマーサクセスチームの規模に応じて、よくある課題と解決方法について解説していきます。
まずは2~3名規模の場合です。
チームの業務状況
2~3名程度のチームで、オンボーディング以降のすべてのサポートを顧客ごとに一貫して担当します。サービスのスタートアップ時や、カスタマーサクセスチームの立ち上げ時に多い編成です。
課題
データ集計にかかる業務負荷が高い
顧客の利用状況を正確に把握して対応を検討するために、ヒアリングからの情報を集めると同時に顧客のサービス利用状況をデータによって把握する必要があります。特にスタートアップ時にはこの集計を手動で行うケースも少なくありません。膨大なデータを定常的に集計することは負荷が高く、集計の見落としや人的ミスが発生するリスクも高くなります。
データ集計に時間が取られすぎて、アクションプランの策定に時間がかけられない
本来、データ集計はその後のアクションプランの策定のために行われるべきですが、データ集計の業務負荷が高ければ、コアとなる業務に十分な時間を割くことができません。あるいは、メンバーの業務全体にかかる負荷が膨れ上がってしまいます。
ツールの導入による課題の解決
このような課題解決には、ツールの導入が効果的です。
データ連携と集計を自動化し、業務効率とデータ精度を高める
カスタマーサクセスツールを用いて集計業務を効率化・自動化することで業務全体の負荷を軽減し、コア業務へのリソースを確保することが可能になります。
顧客の状態変化を自動で検知・通知することで対応漏れを防ぐ
ツールは、データを自動集計するだけではなく、データを元にした顧客状態の変化も検知できます。多くの場合、顧客状態の変化は、解約のリスクが上昇している、もしくはアップセルのチャンスが期待できることを意味します。
業務効率化により先回りしたカスタマーサクセス活動を実施
上述の自動検知により、顧客へのアクションを取るタイミングを適切に察知し、先回りした対応が可能です。
3.【チーム規模:15名前後】カスタマーサクセスの課題とツールによる解決方法
続いて、チームがもう少し成長し、15名ほどのチームになった場合を考えてみましょう。
チームの業務状況
複数のチームにより、カスタマーサクセスの各フェーズを分担して担当するケースが多いです。サービス開始から時間が経過し、ビジネス規模が拡大した場合にはこのような形態が取られます。
課題
業務が属人化する・拡大する顧客対応に手が回らない
各担当者の業務が属人化してしまい、担当者の不在や変更による対応の遅れが生じやすくなります。また、各担当者の持つノウハウを横展開できず、活かしきれないケースもあるでしょう。標準化できる業務を見極めたり、対応する顧客に適切な優先順位付けを行ったりして、業務効率化を図る必要があります。
リッチな既存ツールをカスタマーサクセス業務に活かしきれない
SFA(Sales Force Automation:営業支援システム)などのツールが既に導入されており、その機能をカスタマーサクセス業務にも利用したい場合もあるでしょう。しかし、カスタマーサクセスにおいて必要な機能は既存のツールとは異なります。既存ツールとカスタマーサクセスツールの機能や役割の違いについては、こちらの記事も参考にしてください。
ツールの導入による課題の解決
必要な業務を標準化する
各フェーズにおけるタスクのテンプレート化によって、チーム・部門全体として業務効率を高めることができます。また、属人化の防止にも繋がります。
ツールの機能を活用し、対応の優先順位付けを行う
利用状況に変化が生じた顧客への対応優先度を高めるなど、より効果の高い優先順位づけが可能です。対応の優先順位づけは、シンプルにした方がアクションスピード向上に繋がり、効果が見込めます。
4.まとめ
この記事では、カスタマーサクセスのプロセスとよくある課題・解決方法について、チームの規模別に解説しました。カスタマーサクセスの課題は、個別対応が必要となるサクセス期に多く発生します。チームの規模によって課題は異なるものの、いずれの場合においてもツールを活用した各業務負荷の低減と、顧客の状態変化を見逃さないシンプルな仕組みの構築が効果的です。この記事を参考に、カスタマーサクセスツールを活用して、課題の解決にお役立てください。