【2023年度版】カスタマーサクセスにはツールが必須 主要な製品を比較

SaaSやサブスクリプションサービスなどにおいて、商品やサービスを利用する顧客を持続的に成功させることをカスタマーサクセスと呼びます。顧客との継続的な関係を築くためには、能動的に顧客の課題を発見して、解決し続けることが求められます。
カスタマーサクセスを支援するツールはさまざまなものがあり、課題に応じて目的と目標を決めて、目標となる指標を測るために最適なツールを選定しなければ期待する効果を得ることは難しいでしょう。
この記事ではよくある課題とそれに対応する指標、カスタマーサクセスツールの種類と、選定するためのポイントについて解説します。

SFAやCRMでは不十分?なぜカスタマーサクセス専用ツールが必要なのか

現代では多くの企業が、営業・マーケティング活動においてSFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)、BI(Business Intelligence)ツール等のシステムを利用しています。

そういった場合、新たにカスタマーサクセスを実施するにあたって、すでに利用しているこれらのツールを活用したいと考えるのが一般的でしょう。

それぞれのツールが対応できる領域について解説する前に、まずはカスタマーサクセスと営業・マーケティング活動の違いについて簡単に整理しておきましょう。

「契約後」のフェーズに焦点を置くカスタマーサクセス

ビジネスの形が多様化した現代において、「営業」や「マーケティング」はとても広い意味を含む言葉となりました。

ですが一般的に、マーケティングも営業も「自社サービスの契約」を大きなゴールとした活動といえるでしょう。少し厳密にいえばマーケティングは「契約につながるための見込み顧客の獲得」を目標としていることが多いため、営業よりひとつ前のフェーズにおける活動とされます。

いずれにしてもマーケティングや営業活動が「契約前〜契約」までのフェーズにおける活動であるのに対し、カスタマーサクセスは「契約後」のフェーズに焦点を置いた活動であるという点に大きな違いがあります。

カスタマーサクセスという言葉が持つ意味も非常に広いですが、簡単にいえばマーケティングや営業活動によって自社のサービスを利用することになった顧客が、きちんと自社のサービスを使ってくれているか、また顧客が持つ課題の解決にどこまで自社のサービスが貢献できているか、といった視点から「より長く契約し続けてもらう」ための活動がカスタマーサクセスといえるでしょう。

長期的に契約を継続してもらうことで、顧客から得られる全体的な収益(LTV:Life Time Value)を大きくするというのが、カスタマーサクセスの一般的な目的です。

もちろん、顧客に自社のサービスをより長く使っていただくためには、顧客のビジネスに自社のサービスがきちんと貢献している必要があります。

そのために、カスタマーサクセスではサービスの解約率(チャーンレート)や契約の継続率(リテンションレート)といった指標を注視しながら、オンボーディングアダプションエクスパンションといった様々な活動を通して、自社サービスの価値をきちんと伝えていくことを目指します。

SFA・CRM・BIツールがカスタマーサクセスに対応できる領域

上記の通り、営業・マーケティング活動とカスタマーサクセス活動は対応するフェーズが異なります。

そしてSFAは、現状ではあくまで営業活動やマーケティング活動を最適化するためのシステムです。CRMについては「記録」という点でカスタマーサクセスに用いられる場面も増えてきましたが、データの推移や分析といった定量的な観点での活用には未だ高いハードルがある状態です。

そのため、それぞれ得意な領域はあるものの、カスタマーサクセス活動という視点で考えるとそれらのシステムを活用できる範囲はやや限定的といえるでしょう。

一例ですが、以下のような内容であれば、カスタマーサクセス活動においてもSFAやCRM、BIツールが利用できます。

  • 契約に至るまでの基本的な顧客情報や商談履歴の管理:SFA
  • 各種施策の結果分析・可視化:BIツール
  • (契約金額などの情報から判断できる)優先すべき顧客の分類:CRM

など

カスタマーサクセスにおいてSFA・CRM・BIツールでは対応が難しい領域

既存システムが活用できる領域もある一方で、以下のような内容は対応が難しいでしょう。

〇「契約後」にフォーカスした情報を管理する仕組み

SFAなどを利用する場合、契約後も継続的に顧客・案件情報の入力や更新を徹底することで詳細な情報を逐一把握できる仕組みが求められます。

サービス利用の状況や請求情報の変化といった契約後の動きまでを既存ツールで一元管理するのであれば、多くの場合、複雑なカスタマイズが必要です。

〇カスタマーサクセス視点での管理・分析

SFAやCRMでカスタマーサクセスの目的に合わせたデータ分析を行う場合、スプレッドシートをはじめとする別アプリケーションと連携し、分析したい特定のデータを出力・加工する作業が必要となるケースがほとんどです。

〇状況の変化に応じた柔軟な対応

例えば「サービス利用の頻度が増えている」「打ち合わせの回数が減っている」といった情報の変化に対して何らかのアラートを設定したい場合、情報が増えるほど管理も煩雑になります。また、管理すべき指標が複数ある場合、それらをきちんと優先づけできないと結局どの顧客を優先して対応すべきかが判別できません。そして多くの場合、そういったアラートは複合的に発生します。

このように、カスタマーサクセスにおいて既存ツールを活用できる領域も存在するものの、実運用で機能不足に陥るケースも想定されます。

SFAやCRM、BIツールではカスタマーサクセス向けの機能が不十分

結論としては、SFAやBIツールなどをカスタマーサクセスの取り組みに活用することは可能ですが、専用ツールを利用することでより効果的な取り組みを実現できるといえます。なぜなら、カスタマーサクセス向けに用意されていない各種ツールでは、対応が難しい領域も多いためです。

SFA・CRMのカスタマイズを避けるべき理由

では、各ツールをカスタマイズするという選択肢はどうでしょうか。通常、SFAやCRMなどのツールをカスタマーサクセスに利用する場合には、不足する機能をカスタマイズによって追加するケースもあります。

しかし、近年では多くの企業がSaaS型クラウドサービスのSFAやCRMを利用しており、カスタマイズが不可能であることがほとんどです。また、実現できたとしても、カスタマイズにより高コスト化や将来的なメンテナンスの負荷、継続的なカスタマイズの実施など、デメリットも多く発生します。クラウドのメリットが失われるおそれもあるため推奨されません。

カスタマーサクセス専門ツールであれば必要な機能をクイックに利用できる

SFA・CRM・BIツールでは機能が不十分な点や、カスタマイズが難しい点を考慮すると、カスタマーサクセスに取り組むのであれば、必要な機能が用意された専門ツールを利用することも検討するとよいでしょう。

カスタマーサクセスツールには、カスタマーサクセスの取り組みに必要な機能があらかじめ備わっているため、すぐに使い始めることができます。

カスタマーサクセスツールだからこそ利用できる機能とは

ではカスタマーサクセスツールには、具体的にどのような機能が備わっているのでしょうか。

カスタマーサクセス視点での分析

顧客データの集約・統合自体は、CRMなどのツールでも実現できます。一方で、これらのデータをカスタマーサクセス目的で分析するためには、カスタマーサクセスツールの活用が有効です。

例えば、契約期間や月間利用料、累計売上などの軸で顧客を分析・整理したり、解約の年間推移や契約終了予定を可視化したりすることができます。

また一部の専用ツールでは、過去の行動データ等を顧客毎に蓄積できるため、現状の可視化だけでなく、傾向を読み取ることもできるようになり、より高度な分析が実現します。

属人化防止機能

カスタマーサクセスの取り組みにおいて、スケーラビリティは重要な観点です。スタープレイヤーである特定の担当者に依存するのではなく、チームとしてできるだけ多くの顧客にアプローチできる体制を構築しなければなりません。

カスタマーサクセスツールには、属人化を防止する機能として、タスク管理機能タスクのテンプレート化、カスタマーサクセスの取り組みにおいて指針となるプレイブックの作成機能などが用意されています。

顧客変化をとらえたアラートの設定

カスタマーサクセスのポイントである、「顧客の変化を見逃さない取り組み」という観点でもカスタマーサクセスツールは有効です。

契約状況やサービスの利用状況などにもとづいて顧客の状態変化を検知し、優先的に対応が必要な顧客を通知することで、適切なタイミングで顧客をフォローすることができます。また、顧客とのコミュニケーション履歴から注意が必要な文字列を検知する機能によって、詳細なデータをその都度確認・分析する手間を省きつつ、対応すべき顧客を認識することも可能です。

カスタマーサクセスのベストプラクティスに沿った業務運用

一般的にカスタマーサクセスツールは、カスタマーサクセスのベストプラクティスに沿って設計されています。よって、カスタマーサクセスツールの機能にもとづき業務プロセスを検討することで、それらを取り入れられるでしょう。

初めてカスタマーサクセスに取り組む企業であっても、ツールを利用し、必要な一部の機能を使うだけで、要点を押さえた効果的な施策につながります。また、これまでカスタマーサクセスを実施してきた企業も、取り組み方を改善するために、こういったツールの活用を検討してみてください。

カスタマーサクセスツールの選び方

カスタマーサクセスが一般的になったことで、カスタマーサクセスツールも様々なものが提供されるようになりました。では、自社にあったツールはどのように選べば良いのでしょうか。選定のポイントを以下で紹介します。

機能

まずは、自社の目的に合う機能が備わったツールであるかを確認する必要があります。顧客データの管理やセグメント化、グラフなどによる可視化は多くのツールに備わっています。しかし、顧客の状態を分析したり、ヘルススコアとして算出したりする機能や、タスク管理に関する機能などは製品によって有無が異なります。

ツールの導入目的と合わせて、必要な機能が備わっているかを確認しましょう。

ツールのターゲット

B to B向けやB to C向けといった特定のターゲット向けのツールもあります。自社のビジネスに合ったものを選ぶ必要があるでしょう。

また、ツールよっては、いわゆるハイタッチ向けやテックタッチ向けといった業務に合わせた調整がされています。ハイタッチ向けツールであれば、顧客一人ひとりの分析やコミュニケーション履歴管理などの機能が重視されます。テックタッチ向けツールは、スコアにもとづいたメール配信などの自動コミュニケーション機能が備わっているものが多く見られます。

このように、ツールの方向性により機能のラインナップも異なるため、確認すべきポイントといえるでしょう。

他システム連携

カスタマーサクセスの取り組みでは、データの活用が重要です。一方で、取り組みに必要なデータはカスタマーサクセスツール上で生まれるわけではありません。CRMやEC、Web、会計システムなど様々なシステムに存在するデータを収集する必要があります。

そのため、各ツールがどのようなシステム連携に対応しているかは重要なポイントです。自社ですでに利用しているシステムとの連携にデフォルトで対応しているカスタマーサクセスツールであれば、追加での開発コストがかからず効率的です。

対応していない場合、コスト削減のために手動でのデータ連携も検討できます。ツール提供ベンダーによっては、データ投入のサポートオプションなどを用意しているため、確認してみると良いでしょう。

カスタマーサクセスツール主要7製品の機能・料金体系の比較

以下では、主要なカスタマーサクセスツール7製品について、特徴や主な用途、機能、費用などを紹介します。

CustomerCore(カスタマーコア)

ハイタッチ層の強いロイヤルティ形成を行うためのコミュニケーションに特化した機能を有しています。顧客に関する情報を一元管理し、システムが自動巡回することによって、顧客の状態変化をタイムリーに把握することができます。

「現在のデータ」だけでなく、「長期間蓄積されたデータ」をもとに「過去との比較」や「直近の傾向」をもとに、アップセルや解約など今すぐの対応が必要な顧客を高精度でタイムリーに自動検知できる点が特長です。

また、これらの検知から生まれた様々な活動/タスクを顧客軸で管理・共有していくことで、活動の属人化防止、ベストプラクティスの型化といったことも実現します。

CustomerCoreは初期費用500,000円、月額費用100,000円から利用できます。

Growwwing(グローウィング)

自社のカスタマーサクセス活動の経験を元に開発されたツールです。利用状況の可視化や活動の属人化といった、自社が実際に遭遇した課題を解決する機能に力を入れています。再現性のある成功体験をプレイブックと呼ばれるアプローチ指示書に登録しておくことで、事象が再現した場合にタスクを自動生成します。これにより、業務の標準化をサポートします。無料トライアルにより、事前に機能を確認することが可能です。

Growwwingは月額費用60,000円から利用できます。

pottos(ポトス)

顧客への対応プロセスを可視化して進捗管理することにより、担当者による対応のばらつきや抜け漏れを防ぐことができます。また、顧客の画面上に、利用状況に応じたポップアップを自動で表示させることが可能なため、顧客サポートの効率化やセルフオンボーディングの促進に繋がります。

pottosは初期費用300,000円、月額98,000円から利用できます。

HiCustomer(ハイカスタマー)

顧客に関連する情報を一元管理・可視化し、データ分析することで解約やアップセルの兆候を予測し、担当者へアラートを通知します。情報は時系列で管理することが可能なため、どの打ち手がどの効果をもたらしたかを時系列で分析することができ、再現性の高い対応を可能にします。ヘルススコアやアラートのルールは独自に設定でき、自社に合った柔軟な運用が行えます。

Gainsight(ゲインサイト)

マーケティング先進国であるアメリカのツールでbox等の多くの有名IT企業に導入されているカスタマーサクセスツールです。Salesforce上の顧客情報などを含む、あらゆる顧客情報を集約してCustomer360と呼ばれる機能で分析し、解約やアップセルの兆候を察知します。

KiZUKAI(キヅカイ)

顧客ロイヤルティ向上のためのデータの収集・分析に重きを置いたシステムです。散在する顧客データを分析可能な形に整理し、顧客の状態を瞬時に可視化することができます。また、アクションすべき顧客のリストを自動抽出し、スムーズに次の行動へつなげることで顧客ロイヤルティの向上やLTVの改善をサポートします。

SuccessHub(サクセスハブ)

Successhub

カスタマーサクセスにおいてとるべきアクションを判断できるように、SFAや製品、BIなどに関する情報を一元化しつつ、メールやSlackなどの多様なチャネルに対応できるツールです。また、顧客単位でTODOを設定することで、担当の変更などにも柔軟に対応できます。

SuccessHubはユーザー数に応じて月額費用3,000円から利用できます。

まとめ

この記事では、よくある課題とそれに対応する指標、カスタマーサクセスツールの種類と、選定するためのポイント、主要なツール比較について解説しました。

カスタマーサクセスは、一つの作業やツールで完結するものではなく、連携させたり継続的にスコアを記録したりして、その変化や傾向に対して先取りして「プロアクティブ」に行動してこそ実現できるものです。

実際に、最新のカスタマーサクセスツールは、複数の機能を統合したものが増えてきました。自社の状況に合わせ、全体最適が図れるよう、自社に最適なツールを選択してください。

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