サブスクリプション型ビジネスに求められるカスタマーサクセスとは

多くの方は、何らかのサブスクリプションサービスを利用した経験があるのではないでしょうか?近年では、音楽配信サービスや書籍、ソフトウェアにとどまらず、ビジネスシーンでも多種多様なサブスクリプションサービスが登場しています。

長期にわたりサービスを提供するサブスクリプション型のビジネスにおいては、顧客との関係性を深め、顧客がそのプロダクトなしでは生活できない・ビジネスで成功できない状況をつくることが、ひとつの目標となっています。そのための取り組みとして実施されるのがカスタマーサクセスです。

この記事では、サブスクリプション型ビジネスの状況や特性を踏まえ、顧客が「とりこ」になるプロダクトを作るために必要な活動について紹介します。

進むビジネスの「サブスク化」

近年では、多くのビジネス領域において、サブスクリプション型のサービスが登場しています。ここでは、サブスクリプションモデルの普及状況について整理します。

サブスクリプション型ビジネスの普及状況

従来のビジネスモデルは、商品の販売時にほぼすべての対価を受け取る、いわゆる「売り切りモデル」が主流でした。しかし現代では、継続的にサービスを提供し、利用料としてその対価を受け取るサブスクリプション型ビジネスが増加傾向にあります。

この流れは、音楽や動画配信サービスなどの代表的なジャンルにとどまりません。車や食材、消費財、ファッション・コスメ、家具・家電など、あらゆるビジネス領域において、サブスクリプション型でサービスを提供する企業が登場しています。

サブスクリプション型ビジネスが流行している背景には、モノの所有よりも体験が重要視されるようになったことに加え、ユーザーのニーズが「必要なときに、必要な分だけ使いたい」という内容に変化していることも挙げられます。これらによって、サブスクリプション型のサービスは、一時的な流行や部分的な普及にとどまらず、既存のモノづくり型ビジネスも含め多くのビジネス領域への浸透が始まっています。

サブスクリプション型ビジネスでは顧客を「とりこ」にすべき

サブスクリプション型ビジネスの最大の特徴は、顧客との関係性が長期にわたる点です。契約期間がそのまま収益につながるため、顧客に契約を継続してもらい、関連サービスの追加契約も含めLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化していく必要があります。

そのためには、顧客を「プロダクトなしでは生活できない・ビジネスが成り立たない」レベルに到達させることがひとつの目標です。つまり、サブスクリプション型ビジネスにおいては、顧客を「とりこ」にすることが、成功につながるポイントといえるでしょう。

顧客が「とりこ」になるプロダクトを作るために必要なこと

それでは、顧客が「とりこ」になるプロダクトを作るためには、どのような要素が必要となるのでしょうか。ここでは、3つの観点を紹介します。

プロダクト価値の継続的な向上

プロダクト価値の源泉は、機能による直接的解決やプロダクトそのものが提供する体験です。いかに優れたマーケティングや営業、カスタマーサポートを行ったとしても、プロダクト自体に価値がなければ意味がありません。

よって、優れたプロダクトを企画・構築・提供することがもっとも基本的、かつ重要なポイントです。「モノ売り切りモデル」においては、販売時に商品の価値は固定化されます。しかし、サブスクリプション型ビジネスにおいては、継続的に価値向上が図れます。そのため、顧客の満足度や競合他社の提供サービスなどを踏まえて、継続的なプロダクト改善が必要です。

データを生かしたアプローチ

顧客との関係性が長期化するサブスクリプション型ビジネスにおいては、顧客とのタッチポイントから多様かつ大量のデータを収集可能です。

収集したデータを活用し、顧客に対してより優れた体験を提供できるようにします。例えば、ストレスのないスムーズなサポートが受けられることは、顧客体験の一つです。そのような体験を提供するためには、顧客の動向を先回りできる体制が必要であり、データの収集・活用が欠かせません。

また、顧客の利用データを活用して、上述したプロダクト価値の向上を図ることも一つの方法でしょう。顧客がサービスをいつ、どのように活用しているか、活用度はどの程度かなど、データからわかる情報は多岐にわたります。

一方で、サブスクリプション型ビジネスにおいては、競合他社も同様にデータを収集・活用できる環境にあります。競合他社に遅れを取らず、よりよいプロダクトを提供するためにも、データ活用の取り組みは必須といえるでしょう。

「顧客の成功」を支援する

現代のビジネスにおいて、顧客が真に求めているものは機能ではなく成功です。例えば、BIツールの利用者は「レポートが出力される」こと自体を求めているわけではなく、そのレポートを参考にすることで販売量が増加する、または適切な経営報告が可能となる、といったビジネス上の価値を求めています。

顧客がプロダクトなしではいられない状況、つまり顧客を「とりこ」にするには、顧客の成功につながるプロダクトを提供することが重要です。そのためには、上述したプロダクト価値の向上に加え、プロダクトの利用と成功のギャップを埋めるカスタマーサクセスの取り組みが欠かせません。

サブスクリプション型ビジネスの収益性を高めるカスタマーサクセス

カスタマーサクセスとは、顧客と継続的に良好な関係を築き、商品・サービスを継続利用してもらうための活動です。

すでに海外では、カスタマーサクセスは重要な取り組みとして多くの企業が注力しています。その動きはデジタル企業以外にも広がっており、例えば大手小売業のウォルマート社は、2018年の段階でCCO(チーフ カスタマー オフィサー)職を設定し、カスタマーサクセスに取り組んでいます。

サブスクリプション型ビジネスにおいては、顧客がプロダクトの利用を通じて成功を得られるように、カスタマーサクセスが必要です。つまり、顧客をとりこにするための取り組みは、カスタマーサクセスの活動といえるでしょう。

ここまで解説してきたとおり、カスタマーサクセスにおいては、データの活用が重要なポイントです。データを基に成功を届ける活動を行うことで、顧客にとってのプロダクト価値を高めます。また、組織としてデータ活用やカスタマーサクセスを行うためのツール導入も併せて検討するとよいでしょう。

まとめ

この記事では、サブスクリプション型ビジネスで収益性を向上させるための活動として、カスタマーサクセスを紹介しました。サブスクリプション型ビジネスは顧客のスイッチングコストが低く、競合他社への移行が行われやすい領域です。そうした状況のなかで、自社のサービスを顧客に継続して利用してもらうためには、顧客に「とりこ」になってもらうことが近道となります。

カスタマーサクセスの活動は、顧客に成功を届けることで、顧客がサービスなしではいられない状況をつくるのに寄与します。つまりカスタマーサクセスは、サービスの収益性に直結する要素といえるでしょう。

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