カスタマーサクセスでは、顧客の各フェーズに応じた支援が求められます。特にアダプションと呼ばれる活用支援のフェーズは、顧客の継続利用と解約率の減少につながる重要なステージです。この記事では、アダプションの重要性と成功のポイントについて解説します。
1.カスタマーサクセスの主な業務とプロセス
顧客の成功を目指して、顧客と共に伴走するカスタマーサクセスでは、顧客のライフサイクルの各フェーズに応じて、活動のプロセスを設計するべきです。まずは、カスタマーサクセスの主な業務とプロセスを確認しましょう。
オンボーディング
オンボーディングは、顧客が実際に契約した後、社内に導入していくフェーズです。カスタマーサクセスチームは、フィールドセールスからの引き継ぎを行い、顧客の利用定着を促すために支援を行います。
具体的には、顧客と共に、自社サービスを利用して目指すゴールとそのゴール到達のための課題を整理し、認識合わせを行います。その後、整理した項目に従って、導入のためのステップとスケジュールを作成します。
解約率を減少させるためには、契約後、顧客の自社サービス利用への熱量が高いうちに、このオンボーディングを完了させることが重要です。オンボーディングの活動内容や成功ポイントについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
アダプション
アダプションとは、導入後に本格的にサービスを運用・活用し、定着を行っていくフェーズです。自社サービスが顧客の業務で活用され、定常的に利用され続けることは、継続利用率を維持・向上させるために重要です。また、活用が促進されれば、アップセルに繋がる可能性も高まります。
アダプションにおいては、顧客の自社サービスの活用度をヒアリングやデータを元にして継続的に確認し、顧客の成功に繋がる活用方法を提案します。セミナーの実施や顧客の活用事例の紹介なども効果的です。
エクスパンション
エクスパンションとは、顧客の自社サービスの活用をさらに拡大するフェーズです。契約の更新や、顧客の利用単価を上げるためのアップセル・クロスセルがこのフェーズに含まれます。サブスクリプション型のサービスでは、初期導入コストを抑えているため、売上や利益を継続的に維持・拡大していくためにエクスパンションを積極的に狙っていく必要があります。
エクスパンションのためには、顧客において自社サービスの利用が定着しており、活用されているのが前提条件です。また、カスタマーサクセスチームも、顧客のゴールや活用度を理解できていなければ、適切な提案ができません。そのため、オンボーディングとアダプションをしっかりと行うことが求められます。
プロダクトフィードバック
顧客の継続利用に繋がる満足度を向上させるためには、サービスの継続的な改善が求められます。また、活用の提案やアップセルのチャンスを掴むためにも、新機能の追加が必要です。これらのプロダクトへのフィードバックは、特定の既存顧客の満足度や利用率を向上させるだけではなく、既存顧客全体の満足度向上や新規顧客の獲得にも繋がります。
2.タイムトゥバリュー(TTV)とアダプションの重要性
一般的に、ビジネスはスピード勝負であると言われますが、カスタマーサクセスにおいてもスピードは重要です。カスタマーサクセスの必読書の1つである「カスタマーサクセス」に記載されている原則「タイムトゥバリュー(TTV)の向上にとことん取り組もう」はこのスピードの重要性を表したものです。
顧客は、サービスの効果と価値を早期に感じられるほど、自社サービスへの信頼感と満足度が高まる傾向にあります。そこで、サービス導入後のアダプション期において、顧客が価値を感じられるまでの時間(タイムトゥバリュー)をいかに短くできるか、どれほど早期に成功体験を感じてもらえるかが、カスタマーサクセス成功の鍵です。逆に、このフェーズでの自社からのサポートが不十分であり、顧客が求める機能自体は搭載しているのに、それに顧客が気づかない、使い方がわからないなど、顧客が期待する価値を感じてもらえないと将来的な離反の確率が高まります。
3.アダプション成功のポイント
ポイント1:まずは効果が表れやすい成功指標から取り組む
まずは、アダプションの前のオンボーディングのプロセスにおいて、顧客の成功の定義や目標を顧客と共に明確化し、オンボーディング完了後に小さくとも期待していた成功体験をしてもらうことが求められます。そして、その後も成功体験を重ねてもらったり、より大きな成功体験をしてもらったりすることにより、自社サービスへの価値を大きくしていきます。
そのためには、顧客の成功を表す指標をいくつかリスト化し、その中で最も効果が表れやすい(効果を実感しやすい)ものから優先的に取り組むべきです。
ポイント2:顧客の成功に至るまでのプロセス・ジャーニーを整理し、理解を深める
顧客理解を深め、顧客に成功体験を重ねてもらうためには、顧客が辿るプロセスやジャーニーをマップとして可視化し、関係者が押さえるべきポイントの共通理解を持つと効果的です。カスタマージャーニーや、カスタマージャーニーマップの作成方法については、こちらの記事でも詳しく解説しています。
ポイント3:データやツールを活用して、適切なタイミングでフォローアップを行う
効果的なサポートのためには、各顧客に応じた適切なフォローアップを行う必要があります。ヒアリングは重要な役割を持ちますが、実際の利用状況の把握はヒアリングだけでは十分な情報が得られるとは言えません。客観的な情報を追加し、かつカスタマーサクセス担当者の業務負荷を下げるためにも、積極的にデータを活用してください。活用が進んでいけば、自社サービスへの定常的なログインが確認でき、顧客の業務において重要と思われる機能の利用度を把握することも可能です。逆に活用状況に変化が生じれば、何らかのサポートが必要である可能性もあります。
また、このようなフォローアップの効果を高めるためには、タイミングも重要です。そして、適切なタイミングを掴むのに効果的なのが、カスタマーサクセスツールの活用です。カスタマーサクセスツールでは、顧客の利用状態に変化が生じた時にアラートを出し、解約の兆候を逃さずに即時の対応を行うことができます。
ポイント4:セミナーやユーザー会を開催し、効率的な活用促進を促す
ほかにも、自社サービスの機能や実際の活用方法を紹介するセミナーや、ユーザー同士の情報交換の場を設けるのも効果的です。特に、事例の紹介は、具体的な利用方法や課題への対応などイメージが掴みやすいです。また、セミナーやユーザー会への参加度合いからも、顧客の自社サービスに対しての取り組み姿勢や必要とする情報を把握できます。
4.まとめ
この記事では、カスタマーサクセスのプロセスと、継続利用率の維持・向上に繋がる重要なプロセスであるアダプションについて取り上げました。アダプションにおいて、顧客に早期に成功体験を感じてもらえれば、解約率減少につながります。そのためには、顧客の成功の定義を早期に見極めることと、利用開始後のフォローアップが重要です。カスタマージャーニーマップの作成やカスタマーサクセスツールを活用して、アダプションを成功させてください。