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2021年09月24日

SaaSビジネスにおいて重要とされるLTVとは?計算方法や向上施策を解説

SaaSビジネス拡大のために欠かすことのできない指標の一つに、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)があります。また、このLTVとカスタマーサクセスは切り離すことのできない関係性にあります。この記事では、LTVの概念や計算方法、重要視される理由、向上させるための施策、カスタマーサクセスとの関係性などについて解説します。

1. LTVとは?概要と計算方法を解説

LTV(Life Time Value)は、顧客生涯価値と訳され、一顧客が契約開始から終了までにもたらした価値のことを指します。ビジネス形態や目的によって、その考え方や計算式は異なりますが、一般的にはその顧客の総売上もしくは顧客一社/一アカウントあたりの利益の平均値を指します。

LTVは、たとえば従来のパッケージ型ソフトウェアのような、顧客と一度きりの取り引きをするビジネスではなく、繰り返しの購入や継続利用の伴うビジネスに適している指標です。また、顧客ロイヤルティとの関係性が強く、顧客ロイヤルティが高い場合にはLTVが高いという因果関係があることがわかっています。

SaaS業界におけるLTVと計算方法

SaaS業界においては、LTVはKPI指標の一つとして取り扱われることが一般的です。LTVの位置づけは各社のサービス提供形態や状況によって様々ですが、ここでは代表的な計算方法をいくつか取り上げます。

なお、SaaS業界は、一般消費財などの商品単位で材料費や原価を可視化しやすい業界とは異なり、顧客ごとに厳密な原価を算出しづらいビジネスです。そのため、顧客理解のために顧客ごとの価値を正確に把握したい場合は、総売上を考えます。経営指標として、利益ベースで考える際には、全ユーザーの平均を利用して算出します。自社の目的に即した計算方法を取り入れてください。

LTVの計算式(3種類)

 

計算式

 

LTV = サービス利用単価×継続利用期間

LTV = サービス利用単価×継続利用期間×売上総利益率

LTV = (総売上-売上原価)÷購入者数

LTVの計算方法はいくつかありますが、前述したようにSaaS業界は顧客ごとに厳密な原価を算出しづらいため、「LTV = サービス利用単価 × 継続利用期間」で計算するケースが多いでしょう。

チャーンレート(解約率)を加味して売上や利益を算出する場合には、ARPU(Average Revenue Per User)もしくはARPA(Average Revenue Per Account)、すなわち一顧客あたりの平均単価を利用します。

計算式

ARPU(ARPA) = 全顧客(もしくは全アカウント)の総売上÷総顧客数

LTV = ARPU(もしくはARPA)÷チャーンレート

LTV = ARPU(もしくはARPA)×利益率÷チャーンレート

また、従量課金のあるサービスでは、累計の売上をLTVとする場合もあります。

安定したキャッシュフローのためのLTVとCAC

SaaS業界ではやや算出ハードルが高いですが、LTVを利益ベースで算出可能な場合には、CAC(Customer Acquisition Cost)との関係性を確認することで、事業の安定性を評価できます。

CACは顧客獲得単価と訳され、顧客を獲得するためにかかるマーケティング費用や営業部門の費用、オンボーディングにかかるコストの合計額を獲得顧客数で割ったものです。すなわち、一顧客を獲得するためにかかったコストの平均値です。少ないCACで高いLTVを生み出すことができれば、利益は大きくなり、安定した事業を展開しているといえるでしょう。そのため、利益ベースで考える際には、LTVはCACと共に確認することが望ましいです。

SaaSビジネスにおいて顧客ごとに利益を可視化することは難しいですが、可視化できるとこのような活用ができると考えられます。

2. SaaSビジネスにおいて、なぜLTVが重要視されているのか

顧客との関係性は継続的であるため

SaaSビジネスにおいては、継続利用期間が売上や利益に直結するため、顧客の定着化が利益拡大の大きな鍵です。そのため、短期的な売上・利益やコストだけではなく、長期的な視点で費用対効果を意識する必要があります。

そこで、いかにLTVを最大化させられるかが非常に重要といえるでしょう。なお、顧客との関係性を維持するためには、カスタマーサクセスによる働きかけを取り入れることが効果的です。カスタマーサクセスによる成果の指標として、長期視点での売上・利益を表すLTVが用いられることもあります。

かけるべきコストや費用対効果を正しく把握するため

利益ベースのLTVとCACの比率と比較して、キャッシュフローを確認すれば、事業継続の可否判断に用いることができます。

例えば、ARPAが1000円、チャーンレート2%、CACが1,0000円であった場合を想定しましょう。この際、月間売上1000円の顧客獲得に、10,000円もかけるのは高すぎると判断されがちです。

しかし、比率を確認すると、LTV(1,000円÷2%=50,000円)/CAC(10,000円)=5であり、10,000円の顧客獲得コストに対して5倍の収益を生み出していることがわかります。一般的に新規顧客の獲得コストは、既存顧客の維持コストよりも高いとされています。そこで、顧客獲得にかけるべき適切なコストを確認するためにも、LTVを算出して、参照することが重要です。

3. LTV向上の方法とは?

LTVがSaaSビジネスにおいて特に重要であることは既に述べた通りですが、どのような方法で向上させることができるのでしょうか。計算式(サービス利用単価×継続利用期間×売上総利益率)を紐解きながら、LTVの向上方法について紹介していきます。

顧客ロイヤルティの向上

LTVを向上させる上で最も重要なのは、顧客ロイヤルティの向上です。顧客ロイヤルティとは、顧客が企業やブランドなどに対して抱く「信頼」や「愛着」を指し、LTVとは比例関係にあるとされています。どれだけ機能や価格が優れていても、「信頼」や「愛着」といった心理的な結びつきがなければ、自社の優位性に変化が起きた際(機能性や価格が同程度、または優れた競合が現れた時など)、簡単に乗り換えられてしまうおそれがあります。

顧客ロイヤルティの向上は、各計算式のそれぞれの要素を大きくすることにつながります。

  • 上位製品や関連製品も利用してもらいやすくなる(単価向上
  • 競合製品に乗り換えられにくい(継続利用期間の長期化
  • 営業コストをかけなくとも利用し続けててもらえる(利益率向上

顧客ロイヤルティを向上させるには、顧客を理解し、顕在的・潜在的ニーズを満たしていくことが必要です。

サービス利用単価の向上

サービス利用単価を上げることも、LTV向上に効果的です。具体的にどのような施策が考えられるのかを見ていきましょう。

アップセル

アップセルとは、ある商品の購入を検討している、または継続的に購入している顧客に対して、上位商品を提案する販売方法です。例えば音楽ストリーミングサービスであれば、基本料金に追加の料金を支払うことで、“より多くの楽曲を”“高音質で”楽しめるプランを用意しています。

ただ、アップセルの成功は顧客と良好な関係を築いていることが前提となります。例え顧客にとってメリットの大きい提案であったとしても、“押しつけられている”“強引だ”といった悪い印象を与えてしまえば、前向きな検討は見込めません。

まずは、顧客のニーズを理解し、そのニーズを解決する方法として上位商品を提案することが重要です。それが顧客に受け入れられるものであれば、顧客ロイヤルティを下げることなく、一人当たりの利用単価を向上させることにもつながります。

クロスセル

クロスセルとは、ある商品の購入を検討している、または継続的に購入している顧客に対して、関連商品を提案する販売方法です。例えば、開業届けの作成サービスの導入を検討している顧客に対して、確定申告ソフトも併せて提案するといったアプローチが挙げられます。

クロスセルもアップセルと同様、顧客との関係構築が重要です。顧客が既に利用している製品に満足していれば、「他の製品も良さそうだから試してみようかな」「不満はないし、アカウントを一つにまとめられたら便利だな」といった思考に誘導しやすくなります。

また、ロイヤルティがさらに高い状態であれば「すべてこのブランドに統一したい」という気持ちが働き、顧客から進んで関連商品を利用してもらえる可能性も高まります。いずれも提案するタイミング・内容は顧客のニーズに沿っていなければなりませんが、成功すれば利用単価の向上につながるでしょう。

利用IDの増加

SaaSビジネスの場合、利用IDを増やすことで1社あたりの利用単価を増やせます。企業向けのSaaS製品で利用IDを増やすには、“利用人数を増やすメリットを伝える”、“別の部署などでの活用方法を提案する”といった方法が考えられます。

そのためには、ヒアリングや利用状況の分析によって顧客の課題を捉えておかなければなりません。自社のサービスでその課題をどのように解決できるのかを提示することで、顧客の納得感・信頼感が高まり、結果として利用IDの拡大が期待できるでしょう。

サービスの値上げ

もっともわかりやすい例として、サービス利用料金を値上げすることも考えられます。サービス単価が上がれば、各顧客のLTVは自動的に向上します。

一方で、既に提供しているサービスの単価を値上げすることは、顧客にとっては受け入れづらく、解約率の上昇に繋がりかねません。ただし、顧客数がまだ少ないスタートアップ時には、思い切って適切なサービス単価に修正し、継続的な利益の増加を目指すことも重要です。

継続利用期間の長期化

LTVを向上させる別の方針として、継続利用期間を長期化させることも考えられます。では、長期的に利用し続けてもらうためには、どのような施策が有効なのでしょうか?

不満を解消するためのサービス改善

顧客が抱える不満を解消するためには、サービス内容を改善し続けることが重要です。SaaSビジネスは顧客にサービスを使い続けてもらう形態のため、新しく契約を獲得しても、顧客が実際に使用して不便さやストレスを感じてしまうことがあれば、そこから解約につながってしまうおそれがあるためです。

例えば、活用方法を相談するためにカスタマーセンターに電話をかけても、待ち時間が長ければ不満を感じる人も多いでしょう。そこで、カスタマーセンターの規模拡大や、頻度の多い問い合わせをトラブルシューティングとして配布する、チャットボットで解決方法を提案するといった改善を行うことで、こういった不満が解消できます。

長期的にサービスを利用し続けてもらうためには、心理的な結びつきが重要ではあるものの、物理的な価値の提供ももちろん必要です。定期的にアンケートを行ったり、利用状況を分析して不満を持たれやすい箇所を把握したりして、早期に対応していきましょう。

新規性を保つためのサービス改善

新しく契約しても、機能やコンテンツが更新されず陳腐化してしまっては、新規性のある他のサービスに乗り換えられてしまうリスクが高くなります。

あるオンラインミーティングツールでは、リアルタイムで文字起こしを行う機能を追加し、オンラインという特徴を活かして、利用者の潜在ニーズを満たしています。
また、あるSaaS型の業務システムでは、2023年10月より導入されるインボイス制度の開始を見据えて、請求書の記載金額の計算方法を変更できるようにしました。

このように、最新の技術を活用して新規性のある機能やコンテンツを追加したり、法改正に迅速に対応したりといったサービス改善を行うことで、顧客の満足感を高い状態で維持できるでしょう。

複数の料金プランを設ける

複数の料金プランを設けることは、解約の阻止につながります。もし、プランが一つしかなければ、顧客が「利用しない機能があって割高」「機能が少なく物足りない」と感じてしまう可能性があります。

同じ企業であっても、ビジネスの成熟度によって必要となる機能・性能が変わるケースは多いです。そのような時に、複数の料金プランが用意されていれば、解約ではなく“プランの変更”という形で利用を継続してもらうことができます。

解約リスクの高い顧客への重点アプローチ

解約リスクの高い顧客に重点的にアプローチすることも、解約を阻止するのに有効です。製品利用状況の分析や、顧客ロイヤルティを測るためのアンケート調査(NPS®️など)によって、解約リスクの高い顧客を割り出すことができます。

また、解約に至ってしまった顧客を分析すれば、解約率の高い製品や解約につながりやすいタイミングなどを推測する手がかりにもなります。短期的なアプローチ方法としては、お得なキャンペーンの紹介や、有効な活用方法の提案などが考えられますが、中長期的には、解約の原因を捉え根本的に改善していく必要があるでしょう。

利益率向上

LTVを向上させる方針として、利益率を向上させることも考えられます。

営業コストの低減

SaaSビジネスではあまり一般的ではありませんが、利益ベースでLTVを考える場合には、コストの低減も重要な要素です。ただし、製品の品質やサービスレベルを向上するためにかかる費用は投資であり、やみくもに減らすべきではないでしょう。

まずは、顧客の獲得や維持にかかる営業コストを下げることが有効です。営業効率を高めるため、顧客のセグメンテーションを行い対応施策に強弱をつけたり、CRMなどのツールを活用したりといった取り組みを検討してみることがおすすめです。

4.カスタマーサクセスとLTVの関係性

カスタマーサクセスは、LTVを向上させるための有効な施策の一つです。カスタマーサクセスとは、自社の製品やサービスの活用を通して、顧客の成功を支援するビジネス上の取り組みを指します。顧客の課題を解決し成長に貢献することで、自社の売上も向上していくという相互に有益な関係を築きます。

カスタマーサクセスによってLTVを向上させるには、自社が提供するサービスが顧客の業務に深く関わり、大きなメリットをもたらしていることが重要です。そのためには、顧客との契約開始時やオンボーディング時に、顧客の課題や目標を踏まえた上で自社サービスが提供する価値を正しく伝える必要があります。労力はかかりますが、一度カスタマーサクセスに成功すれば、顧客にとって自社の製品が“なくてはならない存在”となり、顧客ロイヤルティの向上=LTVの向上につながるのです。

5. LTVの向上にはCRMやMAツールの活用が有効

これまで紹介した施策を実行するには、より多くの営業リソースが必要となるのも事実です。そこで役立つのが、CRMやMAなどの顧客管理ツールです。これらのツールを活用することで、顧客の行動履歴から解約しそうな顧客やアップセルできそうな顧客を割り出したり、各顧客に合わせたタイミングで必要な情報を自動で提供したりといったことも実現できます。

顧客ロイヤルティを向上させるために、人力でやるべき部分と、ツールを活用できる部分を明確にし、リソースを有効活用していきましょう。具体的な機能はツールによって異なるため、自社に合った製品を選択することも重要です。

6. まとめ

SaaSビジネスで継続的に利益を拡大させるためには、LTVの最大化は欠かすことができません。LTVは、長期的な売上や利益を確認する指標ですが、利益ベースでコストとの関係性を確認することにより、費用対効果やビジネス継続の判断にも用いることができます。

LTVの最大化には、顧客単価の向上や継続期間の向上などが求められます。いずれの方策においても鍵となるのは、顧客理解と、顧客との良好な関係を構築・維持することです。そのためには、カスタマーサクセスの成功は切り離すことができません。ポイントを押さえてカスタマーサクセスに取り組み、LTVの向上に努めてください。

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