カスタマーサクセスを取り入れた既存顧客営業でSaaSビジネスの売上を向上させる

これまで既存顧客営業に取り組んできたものの、カスタマーサクセスには着手できていない企業も多いのではないでしょうか。

カスタマーサクセスと聞くと新しい概念のように聞こえますが、実は既存顧客営業と重複する領域も多い取り組みです。

既存顧客営業にカスタマーサクセスの考え方を取り入れることで、サブスクリプション型のビジネスにおける売上向上につなげることができます。

この記事では、既存顧客営業とカスタマーサクセスの比較を行いつつ、カスタマーサクセスをヒントにした既存顧客営業の強化方法について解説します。

SaaSビジネスの台頭により、既存顧客営業からカスタマーサクセスへ

既に契約を獲得した顧客に対して継続的にコンタクトし、状況に応じて追加提案をしていくことや、契約期間が終了する前に更新を獲得すること、その他にも既存顧客と良好な関係を築いたうえで人脈をつなげ、紹介案件を作っていくことなどが既存顧客営業の主な活動です。

この取り組みは、カスタマーサクセスという概念が浸透する以前から、日本でも一般的に行われてきました。

カスタマーサクセスもまた、顧客の成功に自社のサービスを通じて貢献することで長期的な契約を獲得し、LTVを最大化する取り組みです。

これらは、本質的には類似する概念であるといえます。

では、その共通点と違いとは何なのでしょうか。以下では、2つの切り口から整理します。

両者の比較①:顧客フォローのタイミングと方法

営業は契約の獲得がミッションとなるため、その地点をゴールとすることが一般的です。一方で、実際には顧客はこの段階ではあくまでサービスへの「期待」を購入しているだけで、実際に商品やサービスを利用して価値を享受しているわけではありません。サービスを利用してその効果を実感し、自身の目的を達成できた時点が、顧客が最大の価値を感じるタイミングとなります。

例えば年間契約の継続的な更新など、新規獲得のための営業だけでなく、顧客と長期に関係を築く取り組み自体はこれまでも一般的に行われてきました。

しかし、営業が契約後も細かく顧客のフォローを行うのは難しいケースが多いでしょう。長期的に顧客をフォローしていく場合、当然ながら営業だけではリソースが足りなくなります。

この問題を解決するべく、既存顧客からの収益に重点を置き、専門的にフォローを行う取り組みがカスタマーサクセスだといえます。

両者の比較②:提供すべき顧客体験

顧客はサービスに対して抱く満足度に対してお金を払います。このとき、満足度はふたつの観点からとらえられます。

ひとつは機能面性能面などの合理的な観点です。契約時点での期待値通りであることで、合理的な観点での顧客の期待値は満たされます。

もうひとつ注目すべきは、感情面です。心理的・感情的に期待値を超えた体験をすることで、より満足するという観点をおさえる必要があります。

SaaSビジネスが急増する現代は、売り切り型のビジネスモデルからサブスクリプション型のビジネスモデルへと多くの企業が変化している最中だといえますが、サブスクリプション型のビジネスモデルでは、とりわけこのような顧客体験が重要視されます。

従来の既存顧客営業でも、顧客が不満を持っていないか、どこに魅力を感じて自社サービスを利用しているのかといった情報を取得することが重要でした。こういった利用状況の把握はカスタマーサクセスにおいても重要であることに変わりはありません。

一方で、既存顧客営業はあくまで事後的な対応や担当の感覚・経験則で行われケースも多く、コミュニケーションによって得られる情報を基にした活動だったといえます。カスタマーサクセスでは顧客とのコミュニケーションも取りつつ、基本的には顧客の利用データに基づき、プロアクティブに対処することが求められます。

既存顧客営業からカスタマーサクセスへ

これらの観点を踏まえると、従来は営業活動の一つであった既存顧客営業が、ビジネスモデルの変遷により一つの専門部隊として変化したのがカスタマーサクセスだといえます。

サブスクリプション型ビジネスが台頭したことで、顧客側は短い期間や投資で契約が締結できるようになりました。反面、サービスの乗り換えも容易となり、サービス提供側は契約を継続するために顧客へ貢献することが求められるようになりました。

消費が加速し自社サービスの代わりとなり得る選択肢があふれる現代で、それでも自社が選ばれ続けるための取り組みとして、カスタマーサクセスという概念が浸透しているという見方ができます。

既存顧客営業を強化してカスタマーサクセスへシフトするために

それでは、カスタマーサクセスをヒントにしてサブスクリプション型ビジネスの既存顧客営業を強化していくためには、具体的にどのような取り組みが有効なのでしょうか。

これまでの営業的アプローチからカスタマーサクセスへとシフトし、より効率的・効果的にLTVを最大化するにはデータとツールの活用が重要です。

データの収集・活用

カスタマーサクセス成功のためのポイントはデータの活用です。まずは、顧客を知るためのデータを収集します。具体的には、以下の5点が重要なデータです。

  • 顧客基礎データ:属性情報や利用サービス、支払額など
  • 利用状況データ:サービスのログイン状況や利用状況、データレコード数など
  • サポートデータ:問い合わせ状況や頻度、問い合わせにおいて利用されているネガティブ・ポジティブワードなど
  • アンケートデータ:NPSやCESなどのデータや利用継続意思の有無などの直接的なフィードバックなど
  • センチメントデータ:営業、経営者間など各タッチポイントにおけるネガティブ・ポジティブなどの感情データ

特にSaaSビジネスの営業においては、コンタクト対象を担当者の経験則に基づいて決定していることも多いのではないでしょうか。これらのデータに基づき、コンタクト先を検討することで、効果の高いアプローチが可能となります。

また、コンタクトする際のネタとしてもデータを利用できます。最近サービスをよく利用しているのか、あまり利用していないのかといったことを念頭に会話を始めることで、顧客の課題も引き出しやすくなります。

さらに、データに基づき先回り対応を実施することも可能に。データから傾向を先回りして把握しておくことで、突然顧客から解約されるような状況を減らすことにつながります。

ツールの活用

詳細な顧客データの活用をExcelやスプレッドシートのみで進めるのには限界があります。カスタマーサクセスツールを利用することで、データの活用をはじめとした取り組みが格段に実施しやすくなります。各種データをツールに取り込み、統合して可視化することで、顧客の状態が、ある地点ごとの情報ではなく時間軸ごとの面として把握できるようになります。

また、追加提案に繋がる行動を取るなどの変化がデータに基づきスピーディーに把握できるようにもなり、より成果の出る活動を行うことができます。

また、ツールによってはアラート通知機能を備えているものもあります。サービスへのログイン率などのデータをもとに、顧客の動きに応じてアラートを通知できるようにすることで、変化を見逃さない対応が可能となります。

さらに、顧客ごとの課題やタスクをツールで管理することで、チームとして動きやすい環境を作ることもできるでしょう。

まとめ

この記事では、既存顧客営業とカスタマーサクセスを比較しつつ、既存顧客営業の強化方法としてカスタマーサクセスを取り入れていくことについて紹介しました。

既存顧客営業とカスタマーサクセスは近しい概念といえます。カスタマーサクセスという新しい言葉を過剰に恐れる必要はなく、積極的に取り入れていくことで既存顧客営業をより効率的・効果的なものとできるでしょう。

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