SaaS企業がカスタマーサクセスを実施する目的とは? 施策例も紹介

海外では一般化したカスタマーサクセスの取り組みですが、近年では日本においても普及が進んでいます。

この記事では、SaaS企業がカスタマーサクセスを実施する目的や、カスタマーサクセスを成功させるための主な施策例について解説します。

SaaS企業におけるカスタマーサクセスの目的

カスタマーサクセスの定義

カスタマーサクセスとは、顧客と継続的に良好な関係を築き、商品・サービスを継続利用してもらい、最終的にLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を最大化させる活動のことを指します。

特に海外においてはカスタマーサクセスがSaaSビジネスの成功に必須の活動として位置づけられ、多くの企業に普及しています。

SaaS企業におけるカスタマーサクセスの実施目的

一般的に、SaaS提供企業におけるカスタマーサクセスの実施目的は「LTVの最大化」です。SaaSビジネスは、顧客に継続的にサービスを提供することで収益を高める、いわゆる「リテンションモデル」に該当します。

商品の販売時にほぼすべての収益を得るモノ売り切りモデルと異なり、リテンションモデルにおいては収益を長い期間かけて、緩やかに受け取ります。つまり、顧客にとって必要不可欠なものとして長期間利用されることで、得られる収益が最大化されていきます。

では、長期間利用され、収益を最大化するために必要なこととは何でしょうか。

従来のモノ売り切りモデルの多くは、「買うまで」が勝負でした。企業は商品を購入してもらうために、宣伝活動やマーケティング活動を行い、商品をより多くの人に買ってもらうことを目指しました。

新商品販売時に多額の予算をかけてTV CMや販売促進キャンペーンなどを実施するのは、モノ売り切りモデルにおける代表的な手法です。

一方で、リテンションモデルにおいて収益性を高めるためには、サービスが顧客に必要不可欠といえるレベルまで定着することで、利用の継続や関連サービスの追加契約へとつなげていくことがポイントとなります。

つまり「買うまでが勝負」であった売り切りモデルに対して、「買ってもらってからが勝負」のモデルといえるでしょう。

サービスが顧客にとって必要不可欠なものと位置づけられるためには、サービスが顧客の日々の生活やビジネスにおける成功に貢献するものでなければなりません。

例えば、食事の準備中など親の手が離せない時に、子供が面白いと感じるコンテンツを提供できるYouTubeやNetflixなどは、落ち着いて食事の準備ができるという親の成功にも貢献する側面を持つサービスといえます。

また、AI技術を活用した自動仕訳機能により会計知識がない方でも容易に経理処理を行えるクラウド会計ソフトは、余計な時間を使わずに事業者を本業に集中させてくれる(= 成功を支援する)サービスといえるでしょう。

このようなSaaSビジネスの特徴から、サービスの利用によって顧客が日々の生活やビジネス上で成功できるように後押しする活動が必要となります。これが、SaaSビジネスにおいてカスタマーサクセスを実施する大きな目的です。

カスタマーサクセスを成功させるための施策

顧客が日々の生活やビジネスにおいて成功を手にするためには、顧客と中長期的に関係を構築していくことが非常に重要です。具体的には以下のような施策が有効といえるでしょう。

オンボーディング完了率の向上

サービスの利用開始タイミングは、顧客がサービスに価値を感じるかどうかの最初の分かれ道となります。このとき、サービスの価値をできるだけ早く感じてもらうことが重要です。

顧客が感動や衝撃を受ける体験、いわゆる「ワオ・モメンツ」を提供することで、カスタマーにとって無くてはならないサービスだと感じてもらうことを目指します。

サービスを利用することで初めに顧客が感じる価値は必ずしも大きいものである必要はありません。例えば、利用したい機能がストレスなく利用できる、UI/UXが洗練されており負担がないといった「サービスをこれからも使ってみよう」と思わせるポイントをまずは提供します。

たとえ小さい価値であったとしても、顧客はサービスに対して可能性を感じることができます。

カスタマーサクセスの取り組みとして、顧客にどのように最初の価値を感じてもらうかを検討します。自社のサービスのうち、分かりやすく、かつ効果が感じられやすい魅力を提供できるようにします。

この時、データに基づきオンボーディング完了率を測定し、サービスが顧客にうまく定着化しているかをモニタリングすることも重要となるでしょう。

アップセル・クロスセルによる売上向上

サービスに価値を感じてもらえている顧客に対しては、状況に応じてさらなるLTV向上のためにアップセル・クロスセルを狙っていきます。

サービスの利用状況や契約期間、NPSなどによる満足度の測定結果など各種データからターゲット顧客を見極め、成約率が高いと思われる顧客にアプローチします。

一方で、カスタマーサクセス活動に割ける人的リソースは限られるため、LTVや成約率などの観点からアプローチ方法やアプローチ頻度などを検討することもポイントです。

高いLTVが見込まれる顧客を中心にリソースを割きつつ、メールマガジンやウェビナーなどを活用した、いわゆるテックタッチセールスも併用していきます。

スコアリングによる解約防止

顧客の解約はSaaSビジネスにとって痛手となります。解約防止はカスタマーサクセスの重要な活動の一つです。

ポイントは「プロアクティブ」つまり「先回り」の対応です。顧客がサービスを解約する兆候をデータでつかみ、顧客が解約の意思決定をする前にその原因を取り除きます。

例えば、ログイン率やサービス利用時間が低下しているようなケースは典型的な解約の前兆です。このような顧客に対して、サービスが顧客の成功に貢献できていない理由を確認し、改善につなげる必要があります。

顧客にサービスを継続的に利用してもらうためには、顧客がオンボーディング時点で感じた「ワオ・モメンツ」をさらに上回る体験をどれだけ与えられるかが重要です。

顧客がサービスに対してどのような感情を頂いているかや、サービスが顧客の成功につながっているかをデータ分析により推測し、変化を見逃さないことがポイントとなります。

顧客ロイヤルティ向上による長期的な関係構築

長期的にサービスを利用してもらうための最大のポイントは、顧客ロイヤルティを向上させ、自社や自社サービスのファンになってもらうことです。

ロイヤルティとは「忠誠」を表す英語であり、ある企業や製品・サービスに対して持つ信頼や愛着を意味します。

ロイヤルティが高い顧客は、新サービスを積極的に利用してくれたり、口コミでサービスを広めてもらったりするなど、自社のビジネスに良い影響を与えてくれます。

顧客へのアンケートやヒアリングなどから、顧客がサービスに満足しているか、顧客に対して適切な体験を提供できているかを確認します。

自社としてロイヤルカスタマー化を目指したい層に対してうまく価値を提供できていないようであれば、改善を検討していきます。

データを分析することで、顧客が抱いているサービスの満足度を推測することができます。LTV向上の観点からも、データ分析の活動は重要となるでしょう。

まとめ

この記事では、主にSaaSビジネスを実施している企業を中心に、カスタマーサクセスを実施する目的や、カスタマーサクセスを成功させるための主な施策例について解説しました。

SaaSビジネスの特性を考慮すると、カスタマーサクセスの活動はSaaS提供企業にとってなくてはならないものと考えられます。

また、カスタマーサクセスの取り組みにおいてはデータの活用という観点が極めて重要です。データは顧客を表す鏡といえます。

顧客の行動把握や能動的なアプローチをすべき顧客の特定、顧客の状態変化など、データから読み取れる顧客の状況は様々です。ぜひ本稿を参考にしてみてください。

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