カスタマーサクセスにおいて、顧客との関係構築は最も重要な成功要因の一つです。顧客と良好な関係を築き、それを維持することが、結果的にチャーンを防ぎ、アップセルやクロスセルに繋がっていきます。
つまり、カスタマーサクセスを実現するためには、顧客との良質なコミュニケーションが不可欠です。
本記事では、カスタマーサクセス実現のために必要な顧客とのコミュニケーション、CSM(カスタマーサクセスマネージャー)と顧客との関係構築に着目し解説を行います。
1.カスタマーサクセスにおいて顧客との関係構築が重要な理由
はじめに、カスタマーサクセス実現のために、顧客との関係構築が必要な理由について解説します。
a.カスタマーサクセスの目的
カスタマーサクセスには大きく以下の2つの目的があります。この目的を理解することで、どのように顧客と向き合っていくべきかが見えてくるはずです。
①顧客のビジネスに最大限貢献する(≒利益を拡大・維持する)
まず1つ目に達成すべき目的が、提供している自社のサービスを最大限に活用してもらい、顧客のビジネスの成功に貢献することです。「顧客の成功に貢献する」というのは、カスタマーサクセス活動の根底にある考え方といえます。なぜなら、顧客の成長や成功に自社サービスやスタッフが貢献することで、自社に対するロイヤルティの向上や、自社サービスの継続利用につながるためです。
そしてこれが、もう一つの目的である「LTVの最大化」にもつながっていきます。
②顧客の成功を支え、得られるLTVを最大化する
カスタマーサクセスには顧客生涯価値(LTV)と呼ばれる指標があります。LTVとは、顧客がサービスを使い続けることで得られる売上や利益の総体のことです。これを最大化するためには、顧客に自社のサービスを価値のあるものと理解してもらい、長期間使い続けてもらう必要があります。そのために顧客を理解し、顧客の設定するビジネスゴールの実現に向けて伴走支援を行うのがカスタマーサクセス活動です。
顧客に満足してサービスを利活用し続けてもらいLTVを最大化させることは、担当者であるカスタマーサクセスマネージャー(CSM)のミッションとして課せられています。
カスタマーサクセスの概要や重要性・主な業務内容、そして成功のポイントについては下記の記事で詳細に解説しています。ぜひ参考にしてみてください。
b.顧客との関係構築の重要性
カスタマーサクセスを実現させるためには、何よりも顧客を理解していなければなりません。一般的には、以下のようなポイントを押さえておくとよいでしょう。
顧客と関係を構築するために押さえておくポイント
- 顧客が何のために自社のサービスを導入したのか
- どういった課題があるのか、なぜその課題があるのか
- 課題に対してどのように解決に向けたアプローチを試みているか
- 最終的に何を実現し、どのようなあるべき姿を描いているか
上記は一例ですが、このような顧客の課題を把握し、解決の支援をすることで、顧客と良好な関係を築いていけます。顧客との関係構築が、カスタマーサクセス実現の大前提になるのです。
2.カスタマーサクセス活動で求められるコミュニケーション
では、カスタマーサクセス活動において、どのように顧客とコミュニケーションを取るべきなのでしょうか。具体的なコミュニケーションの方法を解説します。
a.データを基にした論理的なコミュニケーション
カスタマーサクセスでは、勘や経験といった個人に依存する主観的な情報から施策を展開するのではなく、客観的なデータに基づいた論理的なコミュニケーションが期待されます。過去のデータを冷静に分析し、次の打ち手の裏付けを取り、なぜその施策を打つ必要があるのかを顧客にロジカルに説明することで、顧客側も納得して施策を進めることができます。
計測するデータの例
- システムへのログイン回数
- 利用人数
- 活用している機能
- サポートへの問い合わせ回数や頻度
上記のような様々なデータを活用し、顧客の利用状況を理解した上で仮説を立て、コミュニケーションを図ると、顧客とのやりとりがよりスムーズになるでしょう。
b.顧客の状況を把握するための根気強いコミュニケーション
データに裏付けられたロジカルなコミュニケーションだけではなく、活動量を上げ、顧客との接触頻度を増やし、顧客との距離感を詰めていくようなコミュニケーションも求められます。訪問回数や連絡頻度を適度に上げて、顧客に繰り返しアプローチしていくことで、親近感を抱いてもらえるようになります。これは「ザイオンス効果」ともいわれるもので、何度も足を運び、連絡をしてくれる担当者に対して、顧客は自然と信頼を置くようになるのです。ただし、求められていないタイミングでのアプローチが続いてしまうと当然印象が悪くなることもあるため、闇雲に接触の回数だけを増やすのではなく、顧客にとってプラスになる情報が提供できるタイミングを正しく見極められるようにしましょう。また、このようなアプローチの起点となるような顧客データの整備も重要です。
コミュニケーションの頻度例:
・ツール導入やカスタマーサクセスが開始されたタイミング
→少なくとも週に一度は定例など打ち合わせの機会を多く持つ
・PJ開始後
→距離を縮めるためには週に複数回の頻度でコンタクト行うのも効果的
・コミュニケーションの目的
→すぐに顧客が連絡をくれる状況や、カスタマーサクセス担当者が気兼ねなく顧客に連絡をできる関係を構築すること
漫然とコミュニケーションを取れば良いわけではありません。顧客の状況やツールの活用度合い、サポートの必要性やタイミングについて理解した上で、適切にアプローチする必要があります。顧客がサポートを必要としているときにコミュニケーションを薄くするのは避けるべきですが、サポートが不要なときに多くの時間を奪ってしまうことは逆効果です。
顧客と良好な関係を構築できれば、その顧客はいわゆるロイヤルカスタマーになってくれる可能性があります。企業の利益向上において非常に重要な役割を持つロイヤルカスタマーについて、その定義と育成方法は以下のリンクが参考になります。
3.カスタマーサクセスの実現で得られる利益
ここでは、カスタマーサクセスが実現すると、どのような利益が得られるのか解説します。
a.顧客の信頼獲得・ロイヤルティ向上
これまで述べてきた通り、カスタマーサクセスの実現は、顧客が本来なりたい姿・あるべき姿が達成できることを意味しています。その支援を行うことは、顧客からの信頼獲得に繋がります。つまり信頼を獲得できたということは、カスタマーサクセス実現に向けたCSMの伴走支援が、顧客から評価されていることを意味するのです。さらに、今後も顧客がサービスを使い続けてくれる可能性も高まるでしょう。
b.チャーンの防止、アップセル/クロスセルの実現
カスタマーサクセスが実現すると、顧客はチャーン(解約)することなくサービスを使い続けてくれる可能性が上がります。加えて「もっとサービスを利用しよう」と感じてもらえるでしょう。その結果、アップセルやクロスセルに繋がることが増え、さらに大きなカスタマーサクセスの目標実現に向けた支援が可能となります。
c.顧客のビジネスの成長や改善
カスタマーサクセスの実現は、顧客のビジネスが大きく成長することも意味します。つまり、売上や利益の拡大・業務効率の改善など、顧客のビジネスに様々なベネフィットが生じるのです。顧客と自社の双方がWin-Winの関係になる点もメリットといえます。
4.まとめ
カスタマーサクセスの実現には、顧客との良好な関係構築が欠かせません。CSMが中心となり、顧客と適切なコミュニケーションをとりながら、伴走支援を行うことが非常に重要です。ロジカルであるのはもちろんですが、同時に根気強く硬軟織り交ぜたコミュニケーションを取ることで、顧客と自社の双方にベネフィットが生まれます。顧客のビジネスを常に考え、顧客にとってのビジネスゴールの実現に向けたコミュニケーションを取るように心がけましょう。