顧客と良好な関係を継続的に築くためには、顧客が必要な時に必要な対応を行うことが不可欠です。一方で、顧客の数が増加した際に、全ての顧客に対して一律に丁寧なコミュニケーションを取ると、対応に必要な時間が膨大になるため現実的ではありません。そこで、カスタマーサクセスでは、顧客をハイタッチ・ロータッチ・テックタッチの3つの層に分け、それぞれに応じたアプローチを取ることで効率的にサポートします。
この記事では、特に時間を割いてコミュニケーションを取るべき層であるハイタッチの概要と、ハイタッチ層への適切なアプローチ方法を解説します。
1. ハイタッチ・ロータッチ・テックタッチとは?
まず、ハイタッチ層・ロータッチ層・テックタッチ層とは具体的にはどのような顧客層を指すのか、概要を説明します。
ハイタッチ層とは
ハイタッチ層とは、最も利益に貢献する大口顧客で、きめ細やかな対応が必要な顧客層を指します。自社のハイタッチ層を定義するには、現在のクライアントの契約プランだけでなく、将来の可能性も含めて定義をすることが理想的です。
たとえば、一般的には大企業の方が、他部門への横展開の可能性も含めて、利用するメンバーが増加し、契約金額が増加する見込みが高いと言えるでしょう。提供するサービスによっては、ある特定の業種が高額のプランを契約する可能性が高いかもしれません。このように自社としてハイタッチ層に含めるべき顧客を見極めて設定すると良いでしょう。
ロータッチ層とは
ロータッチ層とは、ハイタッチ層と次に説明するテックタッチ層の中間にあたる顧客層です。ハイタッチ層よりも顧客の価値は下がるものの重要な顧客ではあるため、ある程度集団としてのアプローチはしつつ、時には個別のアプローチも必要となります。
テックタッチ層とは
テックタッチ層とは、個々の顧客における利益貢献度は他の層よりも低いものの、数が多いため全体としての収益の貢献度は高い層です。そのため、この顧客層に対してはいかに人的リソースをかけずに繋ぎとめておけるかが重要です。
2. なぜ顧客を分類し、アプローチを変えるべきなのか?その重要性とは
次に、顧客を層に区分して、アプローチを変えるこの手法がなぜ重要なのか、更に詳細に解説します。
オンボーディングと定期フォロー
サブスクリプション型のサービスは、いかに顧客の解約率を低下させ、継続的に利用してもらえる環境を整えるかが重要です。特に、導入後に社内での利用目的や活用方法を浸透させるオンボーディングの成功が、定着率を高めるために重要です。サービスを契約した顧客企業内の担当者だけがサービスの良さを理解していたとしても、社内で活用させることが出来なければ、導入効果を感じることができずに解約率が高くなります。また、社内のユーザーが導入目的を理解せずに、致し方なく使っているような状況であれば、担当者の異動によってやはり解約率が発生しやすくなります。オンボーディングを成功させることが出来れば、その後は活用度合いなどを定期フォローすることで解約率を著しく低下させられます。
リソースを割くべき層とそうではない層の見極め
上述の通り、オンボーディングと定期フォローは非常に重要です。そのため、顧客企業に個別に訪問し、手取り足取りの丁寧な説明を行うことができれば、オンボーディングの成功率は高くなります。しかし、リソースが限られている以上、このような丁寧な対応をすべての企業に行うことは難しいでしょう。
適切に利益を上げるためには、対応の優先順位づけを行い、リターンが高い顧客(ハイタッチ層)に対してはリソースをかけるといったメリハリをつけ、ROIを高めることが重要です。たとえば、月の契約金額が3,000円の顧客と300,000円の顧客で、営業担当者が訪問する労力をかけるべきなのは後者でしょう。すべての顧客に同様のフォローを行い、ハイタッチ層にかける労力を減らしてしまうのではなく、ハイタッチ層に手厚いアプローチを取ることが重要です。
3. ハイタッチ層への適切なアプローチ方法とは
ここでは、最もリソースを割くべき顧客層であるハイタッチ層へのアプローチ方法(ハイタッチ)を解説します。
顧客の理解
ハイタッチ層へは手厚いアプローチが必要です。そのため、営業活動の際に、営業担当者が掴んだ顧客のニーズはもちろんのこと、導入後も顧客の利用状況や顧客満足度調査の結果、担当者の訪問によるヒアリング情報などのあらゆる情報を継続的に掴み、顧客の目的や課題を理解することが重要です。
顧客の理解は、ロータッチ層やテックタッチ層に対しても必要ではありますが、担当者による個別訪問などの労力をかけることで、直接確認しなければ得られないような詳細な情報を得ることがハイタッチ層に対しては求められます。
社内での定着のための導入支援
オンボーディングを初期段階で完了させることが非常に重要です。契約直後はサービス利用意欲が高いため、顧客に利用を定着化させるために最も適したなタイミングだからです。逆に、導入後に時間が経ってからサポートを申し出たとしても、既に顧客の意欲が下がっており、サポートを断られる可能性さえあります。
一般的にはハイタッチ層は大企業であることが多く、そのために社内での利用ユーザー数も多くなる傾向にあります。そのため、顧客企業での導入担当者がすべての社内ユーザーに使い方を説明することは大きな負担となります。サービスの利点や使い方を理解している自社の担当者が、顧客の導入目的や導入プロセス、サービスを利用した運営方法を担当者とすり合わせた上で、資料の配布や実際の画面を使っての勉強会、質疑応答などを行うことが求められます。
定期的な説明会や勉強会の実施
顧客企業内での浸透が行われた後でも定期的に説明会や勉強会を行いフォローしましょう。他社の活用事例や新機能の使い方などを定期的に提供する事で、継続利用率を高める事ができます。また、顧客との信頼関係の構築にもつながります。
カスタマーサクセス部門以外へのコンタクトの把握
カスタマーサポート部門やインサイドセールス部門、経理部門など、カスタマーサクセス部門以外への顧客のコンタクトを把握することもハイタッチ層へのアプローチで非常に重要です。例えば、他部門とのやり取りを把握した上でコミュニケーションをとると、「しっかりと他部門と情報共有されている」と好印象を与えることができます。逆に、障害により顧客とカスタマーサポートのやり取りが発生していることを知らずに連絡してしまうと非常に悪い印象を与えてしまいます。
このように、コンタクトを把握することは顧客満足度に密接に関わるため、顧客とのコンタクト履歴を関連部署間で共有する仕組みを作ると良いでしょう。例えば、最新のカスタマーサクセスツールでは、メールやCRM、コールセンターシステムなどのコミュニケーションデータを効率的に一元管理できます。ツールの活用も合わせて検討しましょう。
顧客の課題に対しての提案
利用が進むほど顧客が活用する場面が増加したり、課題が変化したりします。そこで、顧客の状態を常に理解した上で、解決策の提案など顧客に寄り添ったサポートを行いましょう。時には、課題に対して、社内体制の在り方や業務の進め方など、単なるサービスの使い方のサポートだけではない、コンサルティングのような活動も求められます。
4. まとめ
この記事では、カスタマーサクセスを成功させるために重要となるハイタッチ層の概要と、ハイタッチ層への適切なアプローチ方法を解説しました。
ハイタッチ層へのアプローチを成功させ、継続的に利用して貰うことは企業の収益を高めるために非常に重要です。ハイタッチ層へのアプローチを成功させるには、カスタマーサクセスツールを活用したスピーディかつ効率的な現状把握とそれに即した手厚いサポートにあります。まずは、自社内でユーザーの分類と適切なアプローチ方法を設定し、カスタマーサクセスツールを活用しながら顧客の成功を目指しましょう。