SaaSビジネスにおいて意識すべきカスタマージャーニーマップ とその作成ステップとは?

ビジネスにおける顧客理解の重要性が高まり、カスタマージャーニーマップをはじめとした顧客理解に有効な手法が広く利用されるようになりました。特に顧客との関係構築が収益に直結するSaaSビジネスでは、カスタマージャーニーマップを利用して課題を明確化し、顧客体験を向上させることが重要です。

この記事では、SaaSビジネスにおけるカスタマージャーニーマップの活用方法や、具体的な作成ステップについて解説します。

SaaSビジネスにおけるカスタマージャーニーマップの重要性

カスタマージャーニーマップとは

カスタマージャーニーマップとは、顧客が製品やサービスを認知し、情報収集や比較検討を行い、購入や契約に至るまでの道筋を可視化したものです。ペルソナとして自社の顧客像を定義したうえで、そのペルソナがどのようなプロセスで商品購入に至るのかをイメージし、作成します。

カスタマージャーニーマップを作成することで、各フェーズにおける顧客へのアプローチ方法を整理しやすくなります。

カスタマージャーニーを理解して顧客体験を高め、関係性を構築する

特にSaaSビジネスでは、顧客が長期にわたってプロダクトを利用することで収益を確保できます。よって、顧客との関係性を構築・維持・改善していくことが重要です。

そのために、カスタマージャーニーマップを作成し、顧客がどのようにプロダクトを利用するのかを理解したうえで、各接点でどのようなアプローチが必要なのかを整理していきます。

SaaSビジネスで継続的にプロダクトを利用してもらうためのポイントは、プロダクトの利用が顧客の成功につながることです。顧客の成功を支援するカスタマーサクセスの取り組みでも、カスタマージャーニーマップを活用して顧客理解を深めるべきでしょう。

SaaSビジネスにおけるカスタマージャーニーマップ作成ステップ

以下では、SaaSビジネスにおいてカスタマージャーニーマップを作成し、活用していく具体的なステップを紹介します。

ペルソナの定義

自社のターゲット顧客を念頭に、ペルソナを設定します。
ペルソナは、具体的かつ詳細に定義することが重要です。自社の典型的な顧客をイメージしながら、名前や年齢、家族構成、ライフスタイル、情報収集方法など様々な観点を踏まえて定めます。ペルソナを具体的に定めることで、各プロセスにおける顧客の行動や感情などがイメージしやすくなります。

カスタマーがたどるプロセスを定義

SaaSプロダクトのユーザーライフサイクルに基づき、各プロセスを定義します。
一般的にカスタマージャーニーマップ作成では、認知・調査・比較検討・購入といったプロセスを定義しますが、SaaSビジネスの場合は以下のような契約後のプロセスも重要です。

  • オンボーディング:インストールや初期設定など、利用開始に必要な作業を完了したうえで、サービスの活用方法をある程度理解するまでのプロセス。
  • アダプション:顧客がプロダクトを使いこなし、ビジネスや生活に定着するまでのプロセス。
  • 契約更新:契約更新のタイミングから継続利用してもらうまでのプロセス。顧客の意思を確認し、課題がある場合は、その課題を解決して契約更新につなげる。

プロセスごとの行動・感情・課題を整理

プロセスごとに、顧客がどのように行動し、どのような感情を持つか、またどのような点が課題になるかを整理します。例えばBIツールを例にすると、オンボーディングのプロセスは以下のように整理できるでしょう。

  • 行動:試しにレポートを出力するために、データを登録し、グラフ化を行ってみる。
  • 感情:どのような結果が表示されるのか期待している。自分の業務に役立つ機能があるかどうか知りたい。
  • 顧客課題:スムーズにレポート出力ができなければ、「使いにくいツール」という印象を与え、ツールの利用が進まない。

顧客接点の整理

可能であればそれぞれのプロセスで、顧客とどのような接点が存在するか、または接点が作れるかを整理しましょう。顧客接点を事前に整理しておくと、実際のアプローチ方法を検討しやすくなります。

例えばオンボーディングのプロセスでは、実際に顧客が操作する画面がひとつの接点となります。また、利用方法の研修やサポートデスクなども重要な顧客接点です。

解決策の検討

各プロセスで顧客がマイナスの感情を持ったり、課題が生じたりする場合は、それらを解消する取り組みが必要です。

整理した行動や感情、課題を前提に、具体的な対策を検討しましょう。上述したBIツールの例であれば、オンボーディング時に画面上でユーザー支援を行うことが有効です。

例えば、初めてユーザーがアクセスした際に、「ツールの活用目的」としてレポートの作成を選択したとします。この場合、最初のレポートが作成されるまでのステップをチュートリアルで解説する機能を実装すれば、ユーザーは実際にツールを触りながら目的の操作方法を習得できます。

このような取り組みにより、ユーザーが初めてプロダクトを利用して成功体験を得る、いわゆる「ファーストサクセス」を実現しやすくなるでしょう。

カスタマーサクセスにおいてカスタマージャーニーマップはどのように活用できるか

顧客との長期的な関係性が重要となるSaaSビジネスでは、プロダクトの活用により顧客に成功を届けられるように支援する取り組みとして、カスタマーサクセスが注目されています。

上述の通り、カスタマーサクセスに取り組むうえでは、カスタマージャーニーマップの作成による顧客理解がポイントです。
具体的には、以下のような活用を検討するべきでしょう。

顧客支援の「テンプレート」を作る

カスタマージャーニーマップの作成を通じて、顧客の種別や顧客の状態変化ごとにどのような支援を行えば顧客の課題が解決し、成功へとつながるかを理解します。

また、顧客の状態変化に応じた実際の支援内容を整理し、テンプレート化しておきます。テンプレートを作成しておけば、担当者に依存しない、再現性のある取り組みが実現できるでしょう。

顧客理解を深める

カスタマージャーニーマップを作ることによって、各プロセスで顧客がどのような課題に直面するかが想像できます。顧客体験が重視される現代ビジネスにおいて、顧客の支援における感情面の理解は欠かせません。もちろん、実際にどのような感情を持つかは顧客ごとに異なりますが、傾向を把握しておくことは重要なステップです。

実践を踏まえてブラッシュアップする

一般的にカスタマージャーニーマップは、ペルソナに基づき、想像で顧客の行動や感情を整理していくものですが、カスタマーサクセスを通じて実際に顧客と対話した内容を基に、テンプレートをブラッシュアップしていく取り組みも必要です。

これにより、実態に近い形でカスタマージャーニーを可視化し、顧客のパターン化が可能です。チーム内や会社内での顧客理解のレベル向上につながるでしょう。

まとめ

この記事では、SaaSビジネスにおけるカスタマージャーニーマップの活用方法について紹介しました。カスタマージャーニーマップはカスタマーサクセスでも活用できるため、この取り組みを通じて顧客を理解し、課題の解決策を検討していくことで、より良い施策の立案や実行が実現できるでしょう。

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